札幌市電の四季を収めたDVD「お部屋で愉（たの）しむ 北海道の路面電車 札幌編」が1月から、JRタワー（札幌市中央区北5条西2）6階展望台入口の「札幌スタイルショップ」で販売されている。

2011年の冬、期間限定で走行した「雪ミク電車」。出発セレモニーの様子も収録され、BGMには「初音ミク」が歌う楽曲も

　同DVDは、毎年8月28日に行われる「市電フェスティバル」に合わせ昨年同日から、MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店（南1条西1）、地下鉄大通駅構内・札幌市交通事業振興公社総務部事業所内ほか、ネット通販サイトAmazonで販売を開始。その後、札幌市が推進する「札幌のまちのブランディング」を高める活動の一環「札幌スタイル」の認証製品となった。

　同DVDを制作したのは、写真業の「ハレバレシャシン」と、映像制作を手掛ける「BLOCKHEAD FILMS」のコラボ映像レーベル「Super Standards」（豊平区）。

　ハレバレシャシンは雑誌・広告関連の写真などを手掛けており、同社代表で写真家の山本顕史（あきひと）さんは、札幌の冬をそのまま写真に収める作品の制作・展示などを行っている。助監督・舞台監督助手などの経歴を持つ演出家の高橋研太さんが設立したBLOCKHEAD FILMSは、自主制作映画や映像編集、音楽PV、ライブ映像、鉄道映像作品の制作など幅広く活動している。

　市電DVDの企画の発端は、札幌市電をテーマにしたイベント・市電フェスティバル。「スチールの仕事で同イベントを撮影したとき、会場の熱気に驚いた。参加者は電車マニアの方だけでなく、子ども連れの家族が多くとてもにぎわっていた。市電には長い歴史もあり、『札幌の顔』だと強く感じた」と山本さんは振り返る。共に入居する、札幌のクリエーター支援施設・デジタル創造プラザ「インタークロス・クリエーティブ・センター（ICC）」で、これまでに短編映画やミュージックビデオなどを共同制作してきた山本さんと高橋さん。市電DVDの制作をきっかけに、北国である札幌の地を生かした映像レーベル「Super Standards」を立ち上げた。

　DVDの収録時間は約70分で、札幌市電の営業路線全線・全駅（2011年現在）を2010年の秋冬から8～9カ月にわたって撮影。本編の収録時間は、市電の始発駅となる「西4丁目停留場」から終点の「すすきの停留場」までの乗車時間に合わせた約40分。札幌の四季や一日の移り変わりにもこだわり、市電を軸に雪国ならではの冬の早朝シーンや桜越しの札幌市電、夜のススキノと札幌市電など、時間帯や天候によって変化する札幌の四季折々の風景を収録する。「BGMの楽曲提供なども含め、制作スタッフは全員札幌の人間。『mide in Sapporo』といえる作品に仕上がっている」と山本さん。

　本編以外には、札幌の冬の風物詩ともいえる除雪車両「ササラ電車」のササラ取り付け風景や、まだ日も昇らない時間に大胆に雪を跳ね上げる走行シーンなどを収録。そのほか、今年も冬季限定で走行中の「初音ミク」のさっぽろ雪まつり応援バージョン「雪ミク」をモチーフにしたラッピング電車映像も収録する。同シーンのBGMには、初音ミクが歌う楽曲・cosMo@暴走Pの「少女の空想庭園」ほか、札幌の同人音楽サークル「IOSYS」による「風音レゾナンシック」「next to you」などが登場する。

　「市電フェスのときのDVD購入者の8割は北海道民だったが、アマゾンでの販売では道外、なぜか神奈川からの購入者が多い」と山本さん。札幌市電に関する活動を行う団体「市電の会」からも、「自分たちとは視点が違い大変面白い」と高い評価を受けているという。

　「電車のDVDというとマニアックな作品と思われるかもしれないが、市電だけを取り上げるのではなく、市電を軸に札幌の街の季節感や街そのものの風景を収録している。誰が見ても心安らぎ、見ていて飽きない作品に仕上がっているはず」と山本さん。「集中して見るというよりは、疲れたときに見るヒーリング映像のようなイメージで、『ぼーっ』と見ていただければ（笑）」とも。

　現在は同レーベル第2弾企画として、札幌の除雪車やラッセル車など「大都市の除雪技術」をテーマにした作品の撮影も始まっているという。価格は5,040円。ホームページからはサンプル動画も視聴できる。