サンスターグループ(以下、サンスター)は、サンスター従業員370名を対象に、2019〜2023年の4年間にわたる歯科健診と定期健康診断のデータの分析を行いました。その結果、1日の歯みがき回数が3回以上の人は、2回以下の人と比べて体重増減が少なく、メタボリックシンドローム(メタボ)に関する指標の悪化も少ないことが明らかとなりました。これは、歯みがきという日常的な口腔ケア習慣が、口腔の健康だけでなく生活習慣病予防につながる可能性を示す結果であり、口腔保健の全身の健康への重要性を改めて示すものです。
本研究は、サンスターが参加する研究営業アライアンスでの技術紹介を機に、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所の磯崎隆司研究員らが開発した因果解析アルゴリズムを活用して行いました。本研究成果は、第69回秋季日本歯周病学会学術大会にて発表されました。
<研究概要>
◆研究の背景・目的
メタボリックシンドローム(メタボ)は、内臓脂肪の蓄積に加え、高血圧・高血糖・脂質異常などのリスク因子が重なることで、脳卒中や心筋梗塞といった重篤な病気を引き起こしやすくなることが知られています。そのため、働く世代の健康管理において、その予防は重要な課題となっています。また、歯みがきなどの口腔ケアは、むし歯や歯周病予防だけでなく、近年では歯周病と糖尿病の関連性など、全身の健康とのつながりも指摘されています。しかし、働く世代を対象に長期的な追跡データを用いて、口腔ケア習慣と全身の健康状態との関連を検証した研究は乏しく、本研究では、歯みがき回数と体重変化・メタボ関連指標との関連を検証することを目的としました。
◆対象者属性と方法
本研究では、2019〜2023年までの4年間にわたり歯科健診と定期健康診断を継続して受診したサンスター従業員370名(平均年齢47.5歳、女性が29%)を対象としました。まず初めに、2019年の歯科健診と定期健康診断で得られたさまざまな情報を用いて、因果関係を推定できる統計解析手法である「CSアルゴリズム」(株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所が開発)による解析を行いました。
さらに、2019年の情報から、対象者を1日の歯みがき回数に応じて「2回以下」のグループと「3回以上」のグループの2つに分類し、体重との関連を調べるために、「この1年間で体重が3kg以上増減したか」という質問への回答と、BMI(体格指数)の変化を指標として用いました。また、メタボとの関連を調べるため、血圧、血糖、脂質代謝の検査値とこれらに関連する薬剤の服薬情報からメタボ該当数を算出し、その該当数の変化を指標として用いました。
◆研究結果
1. 体重の増減
CSアルゴリズムによる因果関係の推定の結果、歯みがき回数と「1年間で3kg以上体重が増減した」の回答に関連が認められました。
そこで、1日の歯みがき回数を2群に分けて解析を行ったところ、歯みがき回数が2回以下の人は、3回以上の人に比べて「1年間で3kg以上体重が増減した」と回答した割合が有意に高いことがわかりました。

図1) CSアルゴリズム解析結果全体図
図2) 歯みがき回数と体重増減の関係
2. BMIとメタボ関連指標の変化
4年間の観察期間中、歯みがき回数が2回以下のグループでは、BMIやメタボ関連指標(血圧・血糖・脂質)の悪化がより大きい傾向が認められました。
つまり、1日3回以上歯をみがく習慣がある人は、体重やメタボリスクの管理がしやすい可能性があることが示されました。

図3) 歯みがき回数とBMIの関係
図4) 歯みがき回数とメタボリックシンドローム該当数の関係
◆結論と今後の展望
本研究により、日々の歯みがき回数が体重管理やメタボ関連指標(血圧・血糖・脂質)の維持・改善と関連することが示唆されました。歯みがきという身近な生活習慣が、口腔の健康だけでなく全身の健康、特に生活習慣病予防にも役立つ可能性があります。
今後は、企業などにおける健康経営の一環として、歯みがき習慣を含めた口腔保健指導を推進することで、従業員の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に貢献できることが期待されます。
<研究結果に関するコメント>

大阪大学名誉教授、歯科医師、歯学博士
雫石 聰 (しずくいし さとし)先生
日常的に誰もが行う健康習慣である歯みがきが全身の健康に及ぼす影響に関する研究はそれほど多くはありません。本研究は1日の歯みがき回数、特に2回以下と3回以上の違いに着目し、メタボリックシンドローム関連指標との関係を検討した研究です。
今回の解析では単純な関連性だけでなく、年齢・性別・BMIといった影響を統計的に調整した場合でも、歯みがき回数がメタボ関連指標の変化と関連することが確認されました。
このことは、他の様々なリスク因子を考慮しても、歯みがき習慣そのものが独立した要因として関与しており、良好な歯みがき習慣がメタボリックシンドロームの改善につながる可能性を示唆しています。もちろん本研究の結果のみで因果関係を断定することはできませんが、実際の職域健診データに基づく4年間という長期の継続データから得られた知見であり、歯みがきというセルフケア行動が全身の健康管理に影響を与える可能性を裏付ける重要な一歩で、この結果は、今後健診の場などで口腔保健指導に大いに活用されるものと考えます。
サンスターグループ グローバル研究開発部
安田 多賀子(やすだ たかこ)
本研究は、サンスターグループが長年取り組んできた「口腔と全身の健康」というテーマを、自社従業員の健診データを用いて検証した取り組みです。日々の歯みがきという、誰もが実践できる身近な習慣が、体重管理やメタボのリスクの指標と関連していたことは、私たち研究員にとっても大きな発見でした。今後もこうした研究を継続し、多くの方にオーラルケアの重要性を知っていただけるよう取り組んでまいります。
<学会発表情報>
学会名:第69回秋季日本歯周病学会学術大会 (2026年10月16日(金)〜17日(土)、広島)
演題名:職域世代における歯みがき回数とBMIおよびメタボリックシンドローム関連指標の変化との関係について
発表者・所属:仲盛優菜??、石川美希??、浜頭愛??、茨木浩子??、野田淳史??、磯崎隆司??、安田多賀子??
1)サンスター株式会社、2)一般財団法人サンスター財団、3)株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所
【ソニーコンピュータサイエンス研究所の因果解析技術について】
本研究のデータ解析で使用したCSアルゴリズムは、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所の磯崎シニアリサーチャーらによる研究開発の成果です。商用のデータ解析ソフトウェアツールCALC(海外ではCausightという名称)にもその発展形が利用されています(CALCならびにCausightはソニーグループ株式会社の登録商標です)。
【研究営業アライアンスについて】
一般社団法人研究営業アライアンスが事務局となり、日本の各業界を代表する参画企業の研究開発部門同士が連携するネットワークを構築し、研究シーズとニーズのマッチングによる研究の社会実装化および事業化を目指す取り組みです。https://kenkyueigyou.or.jp/
【サンスターグループについて】
サンスターグループは、持株会社サンスターSA(スイス・エトワ)を中心に、オーラルケア、健康食品、化粧品など消費者向けの製品・サービスをグローバルに統括するサンスター・スイスSA(スイス)と、自動車や建築向けの接着剤・シーリング材、オートバイや自動車向け金属加工部品などの産業向け製品・サービスをグローバルに統括するサンスター・シンガポールPte.Ltd.(シンガポール)を中核会社とする企業グループです。
100年mouth100年health
人生100年時代、サンスターが目指すのは、お口の健康を起点とした、全身の健康と豊かな人生。毎日習慣として行う歯みがきなどのオーラルケアは、お口の健康を守り、そして全身の健康を守ることにもつながっています。
100年食べ、100年しゃべり、笑う。一人ひとり、自分らしく輝いた人生、豊かな人生を送るためにも、お口のケアを大切にしていただきたいと考えています。今後もお口の健康を起点としながら全身の健康に寄与する情報・サービス・製品をお届けすることで、人々の健康寿命の延伸に寄与することを目指していきます。
