日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:カーラ・アルカサル、以下、日本イーライリリー)は、エムスリー株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:谷村 格)が設立したエムスリー総合研究所(所長:外海 実)、および株式会社ミナケア(本社:東京都豊島区、代表取締役:木村 芳朗)とともに、2026年10月15日、企業・健康保険組合における予防医療の社会実装を推進することを目的に発足した「健康経営実装コアリション(以下、本コアリション)」の記者発表会を開催しました。
本コアリションでは、肥満症対策を最初のテーマと位置づけ、参画する企業・健康保険組合と連携し、肥満症に関する社会的理解の促進、肥満症を有する従業員の適切な把握および医療機関への受診勧奨、これらの活動を通じて得られる実社会データの収集・分析を推進していきます。また、本コアリションの趣旨に賛同する健康保険組合も増加しており、発表会時点で、8つの健康保険組合が参画しています。
発表会では、参画健保の従業員を対象としたアンケート結果の報告、肥満症や医療経済に関する専門家の解説、参画健保・企業によるパネルディスカッションを実施し、健康管理の課題や、職域で肥満症対策に取り組む意義について意見を交わしました。

左から、小嶋 毅彦、矢野 裕一朗氏、宮崎 滋氏、GWA健康保険組合(小松氏、石井氏)、高松コンストラクショングループ(権氏)、日本ペイント健康保険組合(森本氏)、内田洋行健康保険組合(舟久保氏、津田氏)
【従業員アンケートから見えた、肥満症への認識】
参画健保の加入事業所の従業員2,176名を対象に、肥満と肥満症に関する認識をアンケートで調査しました。
- 「肥満」と「肥満症」の違いを尋ねたところ、回答者の85.6%が「違いが分からない」「そもそも肥満症という言葉を知らない」と回答しました。
- また、肥満に対する意識について尋ねた設問では、60%の方が「太っているのは自己管理ができていないからだ」という考えに近いと回答しました。
- これらのことから、肥満症が疾患として十分に理解されておらず、「自己管理の問題」とする認識が払拭されていないことが示唆されました。
日本イーライリリー 執行役員 小嶋 毅彦は次のように述べました。「肥満症は、個人の意志や自己管理の問題にとどまらず、適切な治療介入を必要とする疾患です。だからこそ、個人の努力だけに委ねるのではなく、企業や健康保険組合といった『職域』からアプローチし、『健康診断』『従業員データ』などで課題を可視化する仕組みと、それを実際に社会へ広げていく取り組みが必要であると考えています。本コアリションを通じて、肥満症について正しい理解を広く促進するとともに、その対策の重要性を社会に発信することで、肥満症対策が当たり前に行われる社会の実現を目指します。」
【参画健保によるパネルディスカッション】
GWA健康保険組合、株式会社高松コンストラクショングループ、日本ペイント健康保険組合、内田洋行健康保険組合が登壇したパネルディスカッションでは、企業・健保における健康管理の課題や、肥満症対策の取り組み状況、および本コアリションへの期待について意見が交わされました。
企業・健保における健康管理の課題:
- 社員の半数以上が「肥満リスク」を抱えるGWA健康保険組合では、事業主と協力して若年層に向けた取り組みを行っていますが、特定保健指導の対象外となる若年層の肥満対策や、産業医・保健師が常駐していない中小の加入事業所へのフォローに限界があることが課題として共有されました。
- GWA健保の加入企業である高松コンストラクショングループでは、事業主の立場から、経営層からの呼びかけや健保との連携を進めている一方、現場ごとのフォロー体制の差や、社員自身の健康意識を高める難しさが課題に挙げられました。また、病気による長期休職と体調不良による欠勤をグループ全体で集計すると年間約50人分に相当し、その根本要因に肥満や生活習慣病によるカラダの疲弊が密接に絡んでいることから、個人の自己管理に委ねず、若年層への早期介入を含めた、社員が力を発揮できる前向きな支援体制が必要だと述べられました。
肥満症対策の取り組み状況:
- 日本ペイント健康保険組合からは、特定保健指導などのこれまでの施策では届いていなかった層にも、肥満度が高く治療が必要な肥満症の該当者が多く含まれていることが分かり、まず重症化リスクの高いBMI30以上の層から受診勧奨を始める事例が紹介されました。今後は、BMI25以上で、健診で指摘されても「まだ大丈夫」と考えている層にも対象を広げたいとの意向が示されました。
- 生活習慣病の重症化予防の一環として、以前から肥満対策に力を入れてきた内田洋行健康保険組合からは、「肥満症」という病気自体がまだ十分に知られていないことや、健保単独では周知や指導を十分に行き届かせることが難しいことが示されました。
本コアリションへの期待:
- 内田洋行健康保険組合からは、コアリションを通じて肥満症の認知が高まり、正しい理解が広がることで、該当する従業員が自ら医療機関を受診し、治療に取り組むきっかけが増えることへの期待が示されました。あわせて、1社単独のノウハウや人手では届かない層への働きかけや、従業員が行動を変えるきっかけとなるデータ・科学的根拠の創出にも期待が寄せられました。
【専門医からのコメント】
一般社団法人 日本肥満症予防協会 理事長 宮崎 滋先生:
肥満症は肥満に健康障害を合併した状態で、放置すると、まるでドミノが倒れるように脳卒中や心筋梗塞など重篤な病気につながる恐れのある、治療が必要な慢性疾患です。肥満症に併存しやすい高血圧・心疾患・うつ病などは、従業員個人の健康だけでなく、仕事で本来の力を十分に発揮できるかどうかにも影響します。一方、「肥満は自己責任」という偏見が、適切な治療の妨げとなっている可能性があります。だからこそ、肥満症に適切に対応することは、従業員の健康を支え、一人ひとりがより力を発揮できる環境につなげていく重要な機会でもあります。肥満症のある人がよりよい人生を送るためには、このコアリションの取り組みのように、医療・企業・社会が一体となり、セクターを超えて連携していくことが必要です。
Clinician Data Scientist(臨床医データサイエンティスト) 順天堂大学大学院医学研究科総合診療科学教授 AIインキュベーションファームセンター長 矢野 裕一朗先生:
肥満症に関する学術論文や様々なデータから、肥満症は医療費や就労への影響を与え得る一方で、多くの肥満症に該当する方がデータ上「まだ可視化されていない層」として潜んでいることが示唆されました。肥満症を早期に診断・治療することは、働く方々の健康状態を整え、従業員と企業双方の持てるポテンシャルを引き出す「前向きな投資機会」になり得るものだと考えています。
【本コアリションの今後の取り組み】
本コアリションでは、肥満症の早期の改善が、働く方の健康増進や生活の質(QOL)の向上に役立ち、結果として、中長期的な医療費の抑制にもつながる可能性があると考えています。また、従業員の健康状態が改善されれば、本来の力を発揮しやすくなり、企業の生産性向上にもつながる可能性があります。こうした考えのもと、今後は、肥満症の可能性のある従業員への受診勧奨を開始するとともに、従業員の皆さまに肥満症への理解を深めていただくための教育の機会を提供する予定です。
以上
肥満と肥満症について
日本における「肥満」は、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数(BMI)25以上と定義されています。BMIが35以上の場合は、高度肥満となります。
一方で「肥満症」は、肥満(BMI25以上)があり、かつ肥満に起因ないし関連する健康障害(合併症)を1つ以上有するか、あるいは内臓脂肪蓄積がある場合など関連健康障害の合併が予測され、医学的に減量を必要とする病態と定義されており、減量による医学的治療の対象になる慢性疾患です。
肥満症の診断に必要な健康障害

各社・組織について
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、米国に本社をおくグローバル製薬企業イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人として、最先端の科学技術を基盤とした革新的医薬品の研究開発および供給に、50年以上にわたり継続的に取り組んでいます。ダイアベティス(糖尿病)、肥満症、がん、アルツハイマー病を含む中枢神経系疾患、自己免疫疾患など幅広い領域において医療の可能性を切り拓き、誰もが必要な医療を安心して受けられる社会づくりや、人々の健康で豊かな人生の実現に貢献してまいります。
詳細は当社ウェブサイトをご覧ください。https://www.lilly.com/jp
エムスリー総合研究所について
エムスリー株式会社が設立したシンクタンク。エムスリーの有する日本最大級の医療従事者パネル、医療ビッグデータなど広範なデータを活用して、日本の医療実態を中立的な立場で調査・研究し、その結果を広く発信することを目的としています。
株式会社ミナケアについて
「健康に投資する医療(投資型医療)」の実現を目指すヘルスケア企業。健康保険組合をパートナーに、データにもとづく予防・健康づくりの戦略立案から実践支援までを手がけています。
健康経営実装コアリション
https://kenkokeiei-coalition.jp/