札幌プラザ2・5(札幌市中央区南2西5)で3月9日、札幌を拠点に北海道地域のリアルな姿を撮り続けている映像作家・吉雄孝紀さんの作品上映会が開催される。
同上映会は、最新作「町議・房子の逃走」(36分、2018年)と「視(み)る姉」(26分、2016年)の2本立て。「町議・房子の逃走」は、人口5000人を切る架空の町を舞台に、仕出し料理店を営みながら町議会議員を務める45歳女性の葛藤を描く。鉄路の廃線決定をきっかけに自身の子どもたちの進路を心配し、札幌移住を計画する主人公と元町長の父親との確執、「この町には何もないから…」という町民のセリフや突然町議になって食で町おこしを仕掛ける若者との絡みなどを交えて、よくありがちな地方の姿を風刺する。「視る姉」は、霊感の強い姉妹の人生を描く。
吉雄さんは高校生の頃から自主映画を作り、1990年に劇場用映画「へのじぐち」を脚本・監督。その後、道内民放局の報道番組の制作に15年携わりながら、道内各地で町おこしに頑張っている人物を取り上げ、これまでに約300本番組制作をしてきたという。「北海道の地方の姿は、札幌の未来の姿でもあると思う。番組の限られた時間枠に収める映像では地域のプラス面を伝えることが多いが、その裏には伝えきれなかった地域の困難や苦悩がある。私の心の中に15年分たまった地域の本音を作品に込めた。地方のまちでよく見かける話も盛り込み、『いるいる、こういう人』とクスッと笑えるシーンも用意した」と見どころを話す。
吉雄さんが非常勤講師を務める北海道教育大学岩見沢校の生徒8人も、主人公の子ども役や撮影助手として、作品づくりに参加。撮影は昨年9月~10月の間に岩見沢と江別で行われた。途中北海道胆振東部地震が発生し、撮影中止も考えたが、キャストから「ちゃんと形にしよう」と励まされ、安全確認しながら制作を続けて完成にこぎ着けたという。
上映会では「地域と教育と表現」をテーマにトークショーも行う。ゲストに、地域交流拠点「江別港」(江別市)を運営する橋本正彦さんと、栗山町で地域おこし協力隊員として活動しながら町のにぎわい創出を目的に運営会社を立ち上げ、昨年11月に地域密着型バル「くりとくら」をオープンした高橋毅さんを招く。司会は、町会議員役で作品にも出演するパフォーマーの加賀城匡貴さんが担当する。
「北海道の地方自治体の町会議員報酬は全国約1500市町村の中でも下の方。映画の登場人物と同様に本業を持ち議員活動している人も多い。この作品をきっかけに地域の将来を考える人が増えるよう、道内各地でも上映したい」と吉雄さん。
14時15分開場、14時30分=「視る姉」「町議・房子の逃走」上映、15時50分=トーク、17時=「町議・房子の逃走」「視る姉」上映。チケットは、前売り=1,200円、当日=1,500円。