プレスリリース

流氷が訪れるオホーツク海の「能取岬灯台」を結節点とした地域活性化に関する調査事業を実施しました 「願いの灯台 ~ノトロのヴィーナスが導く未来~」

リリース発行企業:海と日本プロジェクト広報事務局

情報提供:

能取岬(のとろみさき)灯台コンソーシアムは、日本財団「海と灯台プロジェクト」の助成制度「新たな灯台利活用モデル事業」の採択を受けました。網走市にある「能取岬灯台」において、灯台を結節点とした地域活性化の道を探ることを目的とした「能取岬灯台利活用プロジェクト」を実施しています。
今年度は、能取岬灯台や周辺の歴史・環境の文献調査や関係者へのヒアリング調査を行い、その特徴からストーリーと来年度に向けた観光コンテンツを考案。また、北海道内・道外視察、ニーズ調査やファムトリップ、二次交通調査などを実施しました。これらを通じて網走地域全体への経済波及効果の検証を行うことで、能取岬灯台の新たな可能性が見えてきました。

この事業は、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として、灯台を中心に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、異分野と異業種、日本と世界をつなぎ、新たな海洋体験を創造していく「海と灯台プロジェクト」の助成を受けて実施したものです。



1.北海道網走市について
網走市は、札幌市より東へ340km程の所に位置し、オホーツク海に面した人口約3万2千人の市です。主な産業は水産業、農畜産業、観光業です。博物館網走監獄や流氷観光などは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。一方で、全国的に地方が抱える少子高齢化、人口減少、空き店舗の増加などが問題となっています。
網走市中心部から北へ12km程の所に能取岬があります。視界が開けた岬からは知床連山を見渡すことができ、夏季の沖合にはクジラやイルカが回遊し、冬季には流氷が訪れる自然豊かな環境にあります。このような素敵な岬の先端に能取岬灯台があります。
能取岬灯台は、日本航空(JAL)のプロモーションや中国人なら誰もが知っている「狙った恋の落とし方。」という映画のロケ地をはじめ、様々なロケ地として使用されています。観光地として独自性が高く、ポテンシャルもとても高いと言えます。

2.灯台に願いを・・・灯台を結節点とした地域活性化へ
魅力あふれる能取岬ですが、観光客が来訪してもお金の使い途がないために観光消費に繋がりません。また二次交通がないことから自動車かレンタサイクルでしか訪れることができないため、観光地としてのポテンシャルを十分に活かせていない状況にあります。
このように魅力と課題の双方を抱えていますが、魅力を最大限に活かし「灯台を結節点とした地域活性化」を図るために当プロジェクトを立ち上げました。
灯台を軸に、観光客と観光事業者、そして地域住民を巻き込むことで、灯台の収益化、二次交通の開通、閑散期対策などにより地域活性化を図り、未来へ継承していくというものです。

3.歴史・環境調査、二次交通調査
(1)歴史
 能取岬灯台をより深く知るために、歴史を調査しました。概要を以下に記載します。
・明治時代(1868-1912)根室の納沙布岬灯台と宗谷岬灯台との間には一切の航路標識がなく、航行は非常に危険な状況でした。網走の高田亦次郎を中心として灯台建設の要望が出されました。
・1916年(大正6年)能取岬灯台が完成し、初点灯。北海道における鉄筋コンクリート造の灯台としては最古のものです。
・1958年(昭和33年)網走国定公園に指定されました。
・1964年(昭和39年)美岬ライン開通により、アクセスが大幅に改善されました。
・1973年(昭和48年)レストハウスが開設されるなど、観光インフラの整備が進められました。
・1979年(昭和54年)灯台が改築され、白と黒の特徴的な外観が維持されました。
・1985年(昭和60年)オホーツク流氷のっとりランド網走が開幕されました。
・2015年(平成27年)マラソン大会のコースに組み込まれました。

(2)環境調査
能取岬灯台の観光振興をする上で必要な環境調査を行うため、紋別海上保安部、北海道、網走市などへのヒアリングを行いました。
・灯台の敷地自体は海上保安部が管轄しています。
・国定公園内にあるため、北海道管理による制約があります。
・灯台の電力は太陽光発電を活用しています。
・トイレの電力は発電機を使用し、上水は近くの小川より引き、下水は汲み取りを行っています。

(3)二次交通調査
網走市内の路線バス、オンデマンドバス、都市間バスなどを運行している網走バスに協力していただき、能取岬への運行可能性について調査しました。巡回路線バスとオンデマンドバスでの運行コストを試算し、今後の運行についての可能性を探りました。

4.能取岬灯台独自のストーリーの掘り起こし
 能取岬灯台独自のストーリーを掘り起こし、能取岬灯台に設置する構築物と関連付けを行いました。

(1)オホーツク文化人
5~6世紀に、北方より「オホーツク文化人」と呼ばれる海洋の狩猟民族がオホーツク沿岸に渡ってきました。オホーツク海の沿岸部のみで栄えた独自の古代文化を持ち、網走市内にはモヨロ貝塚などに遺跡が残されています。クジラやアザラシ漁がおこなわれていたことが分かっています。また、クジラの歯で作った女性像が発掘され、「モヨロのヴィーナス」と呼ばれています。
(2)モヨロのヴィーナス
オホーツク文化人は、信仰心が強く巫女(シャーマン)の文化があり、占い、祈祷、呪詛などを行っていたことが分かっています。そして、「モヨロのヴィーナス」が巫女(シャーマン)であるとの説があります。



(3)能取岬灯台独自のストーリー
自然や神と交信し人々を導いた巫女(シャーマン)と、航路標識としての船の安全な航海を導いている灯台は、同じ「導き」という役割を果たしています。このことから、能取岬灯台を船だけではなく、立ち寄った人々を導く「旅人の願いを叶える場所」として位置づけ、次のキャッチフレーズを作りました。
 「願いの灯台 ~ノトロのヴィーナスが導く未来~」



5.視察・ディスカッションおよびニーズの裏付け調査
(1)視察・ディスカッション
当プロジェクトでは、優れた企画に結び付けるため視察とディスカッションにも力を入れました。

1.もいわ山山頂展望台(北海道札幌市)
ロープウェイ、ミニケーブルカーを乗り継ぎ、山頂へ行くと素敵な景観を楽しむことができます。レストラン、南京錠販売、そして幸せの鐘を響かせ、愛の鍵をかけるという体験を提供しています。また、中腹駅のお土産ショップではこだわりのグッズを購入することができ、旅行者にとって楽しみがちりばめられています。包括的に収益を得られる秀逸なビジネスモデルとして大いに学ぶところがありました。



2.石狩灯台・厚田展望台(北海道石狩市)
石狩灯台は年3回イベント時に一般開放しており、灯台の衣装を身に纏った灯台お兄さんも地元の方々から人気が高く、プロモーション面で多くの知見を得ました。また、恋人の聖地に認定され誓いの鐘などもある厚田展望台では、南京錠や恋人証明書などグッズのバリエーションが示唆に富んでいました。



3.恋路が浜と伊良湖三崎灯台(愛知県田原市)
柳田國男が恋路ヶ浜に流れ着いた椰子の実の話を島崎藤村に語り、藤村がその話を元に創作・執筆した「椰子の実」。詩を再現し石垣島で椰子の実を毎年100個流すイベントを行っており、ストーリーの大切さを学びました。
幸せの鐘、鍵に加え、想い石、四つ葉のクローバー、写真撮影や飲食など、楽しめる要素が豊富にあり、有益な情報を得ることができました。



4.磯笛岬展望台・ツバスの鐘(三重県志摩市)
ツバスとはブリの稚魚の幼名で、ブリは成魚になるまで呼び名が変わり縁起の良い出世魚といわれています。この鐘を鳴らすことにより出世、幸運をもたらすというストーリーがあります。
アッパ貝の絵馬については、養殖の方に無料でいただき、障がい者施設で加工を行い、無人販売をしているとのことで、ローコストオペレーションの面で大変勉強になりました。 



(2)観光客へのヒアリングと旅行関係者のファムトリップ
1.観光客へのヒアリング
網走市を訪れた観光客30名に対しヒアリングを実施し、ニーズ調査を行いました。得られた結果を基に、観光客の要望に沿った企画を立案しました。
2.旅行関係者のファムトリップ
能取岬灯台にて、旅行関係者を対象に企画案の体験会を開催しました。併せて、現地アクセス手段(二
次交通)に関する課題や改善点について意見を収集し、これらのフィードバックを反映させ企画の改善を進めました。

6.来年度以降の展望
 来年度以降、次の構築物を設置することで能取岬灯台を観光地としての魅力を向上し、一層多くの観光客の来訪を促し、網走への滞在日数増加や閑散期への来訪促進、観光消費拡大などに繋げていきます。

(1)構築物
1.願いを叶える鐘
 青い空と海、夏季の緑の大地、冬季に雪と流氷に囲まれた灯台の景色に馴染む西洋風鐘を設置。鐘楼からは知床連山を望む絶景スポットを創出。能取岬の高台から遥か遠くへ鐘の音を届けられるようにします。
2.ホタテ貝の絵馬
 網走を代表する海産物であるホタテの廃材を活用した絵馬を吊るす絵馬掛所を設置し、観光客の願いを象徴する場を創出します。ホタテ貝の絵馬は原価を低く抑えられ、また無人販売により収益化を図ることで、持続可能な仕組みを作ります。
3.願いを届けるポスト
 明治期に初代灯台が設置された時代と同じ時期に普及した円筒形郵便ポストの復刻版を設置します。旅行者が願いを込めた手紙を投函できる仕組みを導入し、「願いを届ける灯台」というコンセプトのもと、大切な人への思いを物理的・精神的に伝達するシンボリックな空間を創出します。



(2)イベント
「願いの灯台」の具現化に向け、ホタテ貝の絵馬に書かれた願いを叶えるキャンペーンを実施します。具体的には「灯台に関する願い」「網走観光に関する願い」など、テーマを明確化することで実現可能性を高める予定です。
また竣工記念イベントでは紋別海上保安部と連携し、灯台の一般公開を実施します。



(3)その他
インフラ整備
・灯台の歴史解説板と周遊ルート案内板の設置
・記念写真用スマホスタンドの常設(灯台・海・鐘をフレームに収める最適位置)
SNS活用
・「灯台とポージング」をテーマとした写真コンテストの開催(ハッシュタグで投稿募集)
商品開発
・飲食店協力による灯台デザインメニュー(例:灯台型パフェ等)
・お土産向け灯台スイーツ(例:焼き菓子等)
・オリジナルグッズ展開(例:キーホルダー・ステッカー等)
集客施策
・キッチンカー誘致による飲食エリア形成
・季節限定イベント(案:クリスマスイベント等)
このように、灯台に願いを込めて・・・灯台を結節点とした地域活性化を図ります。




<団体概要>
団体名称:能取岬灯台コンソーシアム
活動内容  :能取岬灯台の歴史や環境調査を行ない、観光資源としての新たな活用法を見出すとともに
収益化を図り、灯台を結節点とした地域活性化と持続可能な事業体制の構築を目指す。







海と灯台プロジェクト 新たな灯台利活用モデル事業
日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として、灯台を中心に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、異分野と異業種、日本と世界をつなぎ、新たな海洋体験を創造していく「海と灯台プロジェクト」。その取り組みのひとつである「新たな灯台利活用モデル事業」は、灯台の様々な利活用モデルを創出することで、灯台の存在意義を高め、灯台を起点とする海洋文化を次世代へと継承していくことを目的としています。
海と日本プロジェクト公式サイト https://uminohi.jp/
海と灯台プロジェクト公式サイト https://toudai.uminohi.jp/

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