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札幌で「TEDxSapporo」 次世代創る情熱、エキスパートらがプレゼン

Windows95開発時の経験を伝える中島聡さん

Windows95開発時の経験を伝える中島聡さん

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 北翔大学北方圏学術情報センター「ポルト」(札幌市中央区南1西22)で7月3日、プレゼンテーションイベント「TEDxSapporo 2016」が開催され、約350人の参加者がスピーチに耳を傾けた。

7人のプレゼンターと当日の参加者ら

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 今年のカンファレンステーマは「Relay your story」。文化、地域、人などさまざまな出会いの中で自分が受け取った思いや経験を未来につなげることをテーマに、道内外のプレゼンテーター7人が自分の体験を披露した。

 幼少よりジャズダンスやバレエを学び、ブロードウェイ・ダンス・センターに留学。現在、子どもたちにダンス指導するなどアーティストの人材育成をしながらグラフィックデザイナーとして活躍する顔も持つ坪田知紗(ちさ)さん。ニューヨークから帰国後、子どもたちへチアダンス指導を行った際に直面した壁について紹介した。「相手を教育しようとするのではなく、自分が変わろうとする努力が必要」「子どもたちとともに自ら考え工夫すること、うまくいかないときこそ自分の在り方を見つめ直す、子どもたちが困っているときに手を差し伸べる、この3つが大切」と提案した。

 岩見沢市でワイナリー「10R(トアール)」を運営する醸造家のブルース・ガットラヴさんは昔ながらの酒屋の前掛けをして登場。「ワインの不思議な力」をテーマに、自身とワインの関係を振り返った。ワイン販売をしていたときに南アフリカ産ワインの販売を停止。同国産ワインの購入がアパルトヘイト(人種隔離)の応援につながる旨を来店客へ訴えた。その後来日し、足利のワイナリーの立ち上げに従事。ワイン生産を通じて日本の農業が弱くなっていることを懸念して2009年に北海道へ移住。農家支援、ワイン好きの誘客やまちづくりなどワインを通して循環する経済の構築に取り組んできた。「もっと農家と人を元気にして次の世代を守ることにつなげたい」と話した。

 折り紙工学家の繁富香織さんは英語でスピーチ。大学で展開構造物という分野に出合い、卒業研究で行った日本一大きなラワンブキの葉の畳み方の構造や強度について国際会議で発表しイギリスへ留学。医療分野の展開構造物の研究にあたり、折り紙技術を血管を保護するために使うステントへ応用し、体温と同じ温度になるとステントが展開するようにした。現在は細胞レベルで折り紙技術を応用する研究に着手。「折り紙が命を救う。伝統技術が見方を変えると最新技術となる。新しい技術を札幌から世界へ発信したい」と目を輝かせる。

 米国マイクロソフト社でWindows95のOS開発など次世代ユーザーインターフェースの設計に従事した中島聡さん。ロケットスタート型で物事を進めるメリットについて紹介した。小学校3年生のとき、あと3日で夏休みが終わるが宿題が終わっておらず釣りに行けなかったことがトラウマ(心的外傷)になり、以降ロケットスタート型になったという。マイクロソフト時代に次世代OS開発プロジェクト担当になったときは、皆がのんびりしているときに集中して仕事を進め、それがWindows95の基になったという。ラストスパート型では後半の変更や変化に対応できないとして、「ペース配分はきちんとやりましょう! やるかやらないかの問題だけ」と言葉に力を込めた。

 福祉活動家の浅野目祥子(さちこ)さんは、何気なく参加したさっぽろ雪まつり「福祉ボランティア」がきっかけで「福祉の面白さ」に気付く。だがあるとき「何のためにボランティアをしているのだろう」という疑問を持つ。それを解消してくれたのは、会ったこともないご夫婦からの感謝の手紙だった。10年間ずっと妻が一人で介護をしてきて初めて夫に感謝されたという感激がつづられ、夫をボランティアへ託して外出する自信も付いたという。「『手伝って』と言える人を増やそう。そして自分から恩を次の人に返すことをしていけば次世代が変わっていく」と笑顔を見せた。

 2014年9月に世界初のiPS細胞治療を行い、今年6月に臨床試験の実施を発表した高橋政代さん。網膜治療に幹細胞使用の可能性を見出しているが、再生医療は始まったばかりで現状ではわずかに治るだけのレベルでしかない。健全な諦めも必要になってくる。今はデバイスを使えば視覚障がいを技術面からサポートすることも可能。わが子の視覚障がいを「かわいそうな子」にしてしまう親がいるとして、視覚障がいを「かわいそう」にしない社会は医療従事者以外にもできると話した。「不安や不満に思うことがあったら、変える人になりませんか」と呼び掛ける。

 投資家の藤野英人さんは、大学生が抱く投資家についてのイメージについて紹介。「投資家=ダーティー」「お金儲け=悪」のイメージだという。そのベースは働くことに対する日本人の意識の変化が悪循環を招いているのではと持論を展開した。資産運用会社でファンドマネジャーを務めて成功したがリーマンショックで破綻するという苦い体験も。その後、大企業よりも成長著しい中小企業に着目して投資し、格付け投資情報センターが選定するファンド大賞を5年連続受賞。「元気な企業を応援すれば日本は元気になる」と話す。「投資とはお金だけではない「ありがとう」の言葉掛けも投資。感謝と誇りが投資の原点」と、7人のプレゼンターの最後を感謝で飾った。

 TEDxSapporoオーガナイザーの鈴木卓真さんは「プレゼンターの話を受け継いで、これから何を伝えていくのか、どう行動につなげていくのか考えてほしい」と呼び掛けた。当日のプレゼンの様子は後日、TEDxSapporoサイトで公開される予定。

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