札幌で「TEDxSapporo」 多様性認め合い打ち破るスピーチ

TEDxSapporo 2015のスピーカーと参加者らがステージに集合

TEDxSapporo 2015のスピーカーと参加者らがステージに集合

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 北翔大学北方圏学術情報センター「ポルト」(札幌市中央区南1条西22丁目)で7月19日、プレゼンテーションイベント「TEDxSapporo 2015」が開催され、約350人の参加者がスピーチに耳を傾けた。

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 今年のカンファレンステーマは「Beyond the Border」。互いの個性を尊重して認め合い、周囲の人や環境といった壁や自分の中に存在する壁など、見えない境界線を越えるアイデアを共有することをテーマに、道内外のプレゼンテーター7人が自分の人生体験を披露した。

 小樽でガラス工房「幸愛硝子」を開く木村幸愛(ゆきえ)さんはガラス種に息を吹き込む「吹き竿」を片手に登場。周りの反対を押し切り、大阪から単身小樽でガラス職人の修業をしたが職人の世界の厳しさに2年で挫折。30代で再び小樽に戻り、自分の工房を立ち上げるため覚悟を決めた時から家族の協力が得られるようになったという。「何かをし続ける理由や、何を作るかは変わっていくもの。今の積み重ねが未来の自分を変えていく。そんな未来が楽しみになる挑戦を続けたい」と木村さん。

 ベンチャーキャピタリストの村口和孝さんは、自ら事業を実現する働き方が必要であると提案。世の中には職業を探す「JOB SEEKER(時間を売って組織に所属する)」と仕事を作る「JOB MAKER(事業家)」の2つがあるが、両方のバランスが取れていることが大切と話す。「介護」や「萌え系」を産業化するために村口さんが投資した際は周囲から変人扱いを受けた経験も紹介した。「時代は音を立てて変わっている。21世紀で生きるヒントは、変化を機会としてつかむこと、束縛から解放されること、勇気をもって行動すること」と説く。「人生いつかどこかで実を結ぶときがやってくる」とも。

 「白い恋人」で有名な石屋製菓・社長の石水創さんは、「白い恋人パーク」(西区)の新ユニホーム姿で登場。大学時代に引きこもりになり、会社を引き継ぐための努力をしていないことに気づいて以来、何でも挑戦するようになったという。「引きこもっていては何も残らない」。その後同社に入社するが2007年に「白い恋人」の賞味期限改ざんが明らかになり会社倒産の危機に。そのとき「『白い恋人』はただの菓子ではなく、思い出の証しや感謝の気持ちである」と再認識したという。3カ月後に販売再開したときには、率先して北海道の人が買って再生を応援してくれた。「私にとって、幸せを作るということは北海道の人に恩返しをすることだ」と話す。

 アイヌ文化を継承するToyToyの小川基さんは、アイヌの伝統楽器ムックリ(竹の口琴)とトンコリ(樺太アイヌの五弦琴)の演奏からスタート。アイヌであることにマイノリティーを感じ、中学・高校の6年間は口を閉ざした。その後沖縄へ移住し安心感を得るが「アイヌの歌をうたえずに何が民族だ」と叱咤(しった)され北海道に戻ることに。小樽運河でアイヌ文様のペンダントを並べていたとき「ありがとうございます」と感謝を伝えた瞬間に何かが解放された。「マイナスに感じていたことが全て可能性に変わりトライする道がいっぱいできた」と小川さん。最後に「イヤイライケレ(アイヌ語でありがとうの意)」を参加者に贈った。

 プロダクトデザイナーの伊藤千織さんは留学先のデンマークで、生活に根差した物づくりをしている環境に出会う。そこでは問題をデザイン的に解決する考え方が一般にまで浸透していた。これに影響を受け帰国後フリーランスのデザイナーとして起業するが、世の中はバブルがはじけたばかり。約5年間デザインに楽しさを感じないときがあったという。「今はもう一般の人がデザインに関わって物や社会、地域コミュニティーを作る時代になった」と伝え、「その視点で周囲のものを見ることで世界の見方を変えていこう」と提言した。

 北海道大学の知能数理研究分野 教授でイグノーベル賞を2回受賞している中垣俊之さんは単細胞アメーバの研究を通して「見方が変わると世界の見え方が際限なく変わる」ことが楽しかったと話す。長年の研究で粘菌がえさに最短経路で到達して養分を吸収する計算能力があること突き止めるが、業界はほとんど振り向かなかった経験をした。中垣さんの原点は生物学者のファーブルの世界の見方と、自分の小学生時代の創作工夫の頭の使い方だという。心が暴走したり迷子になった時は、見失わないよう心を抱きかかえてきたのがこれまでの研究生活だったと話した。

 慶応義塾大学大学院 メディアデザイン研究科教授で日本法人マイクロソフト初代社長の古川享さんは、自身の生い立ちや経験をベースにさまざまな壁を越えてきた経験を語った。高卒の古川さんが学歴の壁を越えるために活用したのがネットワークの力。コンピューターを通じて人と人がつながると、とてつもないことが起こると思ったという。昨年8月に脳梗塞で倒れてから社会復帰のための過酷なリハビリを超えてきた。手を広げるリハビリで1カ月、指をチョキにするリハビリで3カ月を要した。パワーは毎日発信するSNSからもらったという。SNSの存在が自分自身の知識を増やし、生きるエネルギーになっているとリアルタイムの体験を話した。

 当日はイベントの初の試みとして高校生30人を無料招待した。SNSでTEDを知り参加申し込みをした札幌西高2年の源島菜月さんは「起業の話を聞き、私も起業体験プログラムを受けてみたい」と興味を示していた。

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