道南ITコミュニティ「はこだてIKA」(所在地:北海道函館市)は、2025年8月1日~5日に開催された「函館港まつり」における観光客の行動を、レイ・フロンティア株式会社(本社:東京都台東区)が提供するAIツール「SilentLog Analytics」を用いて調査し、その結果を公開したことをお知らせします。
本調査では、来訪者の滞在時間、移動パターン、宿泊傾向、訪問エリアを多角的に解析し、平均滞在時間の延長や夜間消費の活発化といった、地域経済への寄与が期待できる新たな観光の姿を明らかにしました。従来の「来訪者数の増加」だけでは捉えにくい観光行動を、AIによる位置情報解析によって可視化したものです。
※本リリースは、はこだてIKAが運営する「ITブログ」の転載となります。
はこだてIKA ITブログ:http://www.hakoika.org/2025/09/24/函館港まつりにおける観光行動をaiで可視化/

函館港まつりは1935年、函館大火からの復興を願って始まった歴史ある祭りで、毎年8月1日~5日に開催される函館最大規模の夏祭りです。電飾で彩られた花電車の運行や、市民参加型パレード「ワッショイはこだて」、花火大会など、多彩なプログラムが市内各地を盛り上げます。2日目と3日目には、地元企業などが趣向を凝らした山車や衣装で参加し、踊り手たちが「函館港おどり」や「いか踊り」を披露しながら街中を練り歩きます。沿道の観客も飛び入りで列に加わることができ、誰もが踊り手になれるのがこの祭りの醍醐味です。
2025年は、GLAY TERUさんによる楽曲披露と花火の共演が夜空を彩り、元TOKIOの松岡昌宏さんやLUNA SEAのINORANさんも参加し、函館を盛り上げました。今回の港まつりではどのような観光行動があったのかITおよびAIの力で把握することが、本調査の目的です。
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実施主体:はこだてIKA
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協力機関:レイ・フロンティア株式会社(SilentLog Analytics 提供)
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調査期間:2025年8月1日~5日を他期間と比較
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調査対象エリア:函館駅前、大門地区、五稜郭公園周辺、湯の川温泉街ほか
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解析手法:スマートフォンの匿名化位置情報をAI解析
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分析項目:
滞在時間・滞在密度(ヒートマップ)
歩数・歩幅など移動特性
昼間/夜間の行動時間帯比較
宿泊地別の滞在・移動傾向
訪問スポットとその滞在時間
来訪者ペルソナ(年齢・性別・ライフスタイルなどAI推定)
※データは、レイ・フロンティアが提供するスマートフォンアプリ「
SilentLog」から取得した匿名化済みの位置情報をもとにしています。
※本分析結果は、レイ・フロンティアが取得したデータに基づくものであり、実際の来場者分布とは異なる可能性があります。
SilentLog Analyticsは、スマートフォンのセンサーデータをAI解析し、移動経路・滞在時間・年齢層などを推定・可視化するツールです。観光・都市計画・イベント運営・モビリティ改善に幅広く活用されています。図1のようにChatGPT上での実測データ確認およびヒートマップ等の可視化も実施可能です(図2)。

図1. ChatGPTを利用したSilentLog Analytics(AIによる実測データ解析の様子)

図2. SilentLog Map画面(観光客の移動経路や滞在分布を可視化したイメージ)
<分析結果>
対象:北海道函館市若松町(函館駅周辺)
変化のポイント
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夜間行動増:特に20~22時台のアクティビティ増加
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滞在時間の延長:20分以上の平均増加
特に2025年は、若年層の増加と夜間行動の活発化が顕著であり、音楽イベントや花火大会との相乗効果により、観光客の行動が多様化していることが確認されました。
- 12~2月:降雪により外出控えめ、地元中心の動き。
- 3~4月:卒業旅行・花見需要で回復基調。
- 5月:GWで年間最大級のピーク。
- 6月:修学旅行シーズンで安定。
- 7月:夏休み開始により観光客増加。
- 8月前半:港まつり+花火大会で年間最大の集客期。
→ 港まつりはGWと並び「年間二大観光ピーク」の一角を形成していました。

- 平常時:45~90分
- 祭り期間:
90~150分の長時間滞在者が顕著に増加
- 滞在拠点:駅前 → 屋台通り → 函館ベイエリア方面
滞在時間の延長や移動距離の増加は、観光客が複数のエリアを回遊していることを示しており、祭りが地域全体の観光資源を結びつけるハブとして機能していると考えられます。

→ 各エリアが役割分担を果たし、観光者の回遊を支えていました。
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湯の川温泉:2~3泊の長期滞在が多く、温泉+観光を楽しむ。
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函館駅前:1~2泊の短期滞在やビジネス客が中心。
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五稜郭:観光と宿泊の中間的拠点。
※ 2025年度
? 函館駅前
- ラビスタ函館ベイ(2泊)
- ホテルWBFグランデ函館(1泊)
- フォーポイントバイシェラトン函館(2泊)
? 五稜郭公園前
- ホテルマイステイズ函館五稜郭(2泊)
- 函館天然温泉ルートイングランティア(1泊)
? 湯の川温泉前
- 湯の川観光ホテル祥苑(3泊)
- 望楼NOGUCHI函館(2泊)

→ ベイエリア&函館山エリアが特に強い集客力を発揮していました。
以下は8月2日の観光客の一日行動から、午前は「準備と休息」、午後は「散策と移動」、夜は「景観と消費」と時間帯ごとに行動特性が変化していることを確認しました。夜間観光の比重の高さが明確に示されました。
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?午前
午前は
函館駅周辺(若松町エリア) からスタート。
少し歩いた後、カフェや施設で休憩をとり、のんびりと過ごしました。
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??昼前~午後前半
お昼前には
五稜郭近く(本町~五稜郭町周辺) まで移動。
散策しながら街を歩き、時折休憩をはさみつつ、観光スポットを巡った様子がうかがえます。
13時半には車で少し移動し、
大門地区から西部エリアに向かったあと、
14時過ぎには電車に乗り込み、
市電で函館の街中を移動。
降車後は徒歩で散策し、
元町~ベイエリアの街歩きを楽しんでいたようです ??♂?。
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?午後後半
14時半から夕方までは、
赤レンガ倉庫や元町界隈で滞在。
カフェや観光スポットでゆっくり時間を過ごし、
その後夕方には再び徒歩で1km近く歩き、観光を満喫。
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?夜
夜は再び散策タイム。
函館山の麓やベイエリアを中心に、長い距離を歩きながら夜の街並みを楽しんでいました。
赤レンガ倉庫群やライトアップされた港町の景色を眺めていたのかもしれません 。
最終的には
函館駅周辺 に戻り、23時すぎに活動を終えて一日を締めくくりました。
8月2日の夕方から夜にかけての人流マップを分析すると、観光客は函館駅前を起点に大門地区方面へ徒歩移動し、複数のスポットに滞在している様子が確認されました。
図中の○印は観光客が一定時間滞在した場所を示しており、駅前やホテル周辺などでの滞在が目立ちます。

8/2 17:00-23:00 人流マップ1

8/2 17:00-23:00 人流マップ2
はこだてIKA 分析担当
「平均滞在時間が約30%延び、観光客が夜遅くまで街を楽しむ傾向が明らかになりました。今後もデータおよびAIを利用しながら函館を活性化に取り組んでいきます。本調査の成果は、函館だけでなく全国の観光都市に応用できると考えています。」
北海道・道南地区において、IT産業の活性化、ITによる産業の活性化、技術・知識の普及、技術者の育成を目指して結成された任意団体です。
新しい技術、動向を積極的に取り込み、基礎的な技術を若い世代へ継承していくためのコミュニティを目指しています。 毎年、ITビジネスに携わる経験豊かな専門家による講演を通じ,地域のIT人材がIT業界の新たな動向についての見識を深めるほか,スキルアップに繋げることを目的として,「
はこだてディベロッパーカンファレンス」やデジタル技術を活用したモノづくり系展示イベントを開催しています。
本件に関するお問い合わせ先
はこだてIKA
Email:contact@hakoika.org
分析ツール「SilentLog Analytics」に関するお問い合わせ先
レイ・フロンティア株式会社
Email:info@rei-frontier.jp