音楽家の坂本龍一さんが5月29日、秋元克広札幌市長を表敬訪問した。
中咽頭がんを患い現在療養中の坂本さんは、「札幌国際芸術祭」のゲストディレクターとして準備を進めていた昨年7月、開催直前にがん治療専念のため参加を断念。予定イベントに出演できなかった。
この日、秋元市長を訪ねた坂本さんは「順調に回復している。仕事を始めるのはまだ先だが、体調が戻ってきたので札幌に来ることができた」と元気な姿を見せた。
芸術祭開催中、ニューヨークで治療中の坂本さんの元にイベントの様子が随時伝えられていたことを振り返り、「身はニューヨーク、心は札幌にあった」と当時の思いを語った。雨で中止になったモエレ沼公園のイベントについては、「いつかリベンジしたい。次回もお役にたてることがあれば何でも」と意欲を見せた。
72日間の会期中、目標の30万人を超える47万8200人の来場者数を達成した成果を聞き、「芸術祭が成功して世界からも注目されている。(札幌には)景色とビールと食だけではなく、アートもあると認識されたと思う」と喜びを見せた。
病状公表後初めて公の場に出た坂本さんに対し、「お疲れではないですか」と言葉を掛けた秋元市長に、坂本さんは「緊張してしまった」と表情を緩めていた。「今まで大病をしたことがなく倒れたこともなかったため自分でもびっくりしている。天が与えてくれた充電期間だと思い大事に過ごしたい」と話した。
坂本さんは札幌市民に向けて、「開催に立ち会うことができず、札幌市民の皆さまをはじめ、たくさんの方々を落胆させてしまい、大変ご迷惑をお掛けしました。私にとっても、精魂傾けて作ってきたこの芸術祭の誕生の瞬間を目撃できなかったことは痛恨の極み。2017年に札幌国際芸術祭がより良いかたちで引き続き開催されることを楽しみにしている」とメッセージも届けた。