北海道で活躍する7人がスピーチ-TEDxSapporo 2014開催

「どーせむり」をなくせばいい世界になると植松努さん

「どーせむり」をなくせばいい世界になると植松努さん

  • 0

  •  

 北翔大学北方圏学術情報センター「ポルト」(札幌市中央区南1条西22丁目)で7月13日、プレゼンテーションイベント「TEDxSapporo 2014」が開催された。

家族の応援をバックにアメイジンググレイスを歌う渡邊優香さん

[広告]

 今年のカンファレンステーマ「YOU and I」に合わせ、道内を拠点に活躍する7人が、これまで出会ってきた人、経験してきたこと、見てきたもの、自身を取り巻く世界についてプレゼンテーションをした。

 青森の「津軽三味線日本一決定戦」で2013年に優勝した忍弥(にや)さんの津軽三味線の演奏でスタート。忍弥さんは北海道を代表する若手津軽三味線演奏者。小学校2年生のときに三味線の音と出会い、津軽三味線の家元・佐藤俊彦さんに弟子入り。一時三味線を辞めたこともあったが復帰し、「音楽よりも人間が大事。人間性が良ければ演奏の機会をもらえる」「各パーツが動物でできている三味線を弾くことで動物の供養をする」と師匠からの教えを伝える。日本の伝統音楽を若い人や海外に伝え、音楽で皆がつながることが夢だと語る。

 北海道鷹栖町在住の荻田泰永さんは北極圏の無補給単独歩行に取り組んでいる北極冒険家。冒険を続ける理由を「死が目の前にある生を感じたい」と語る。アルバイトをして貯金し冒険する日々を10年続け、どこまで1人でできるか確認したかったという。目標を北極点に定めると冒険に必要な額が増大。そのうちに仲間が増え、自分に足りない部分をフォローしてくれるようになってきた。「冒険には、人の判断で踏み出した先に死が待っていることもある。日常生活も冒険であり、大切なことは判断の主体性を自分で持つことだ」と話した。

 北海道情報大学4年生の櫻井大樹さんは、外交官を目指し勉強するが受験に失敗。死を意識するほど失意と苦しみを経験するが、親友の存在に助けられ克服した。その経験を同大学(HIU)で開催したプレイベントTEDxHIUでスピーチ。後日、自分の知らないところでイベントを支え頑張っていた大勢のイベントメンバーの苦労を知った。この気付きでさらに自分が大きく変化した。「自分を変えたかったら自身の力だけでは変えられない。人の力が大切」。

 公立はこだて未来大学の美馬のゆり教授は、専門であるコミュニケーションや人材育成、ネットワーク形成などの研究から、コミュニケーションがあるところに人の学びがあり、コミュニケーションが絶たれたところに問題が起きると解説。自身のこれまでの歩みをたとえに「他者の存在から自己の問い直しが生まれる」と話し、「理系女子的生き方」を勧めた。「理系女子的生き方」とは自分のやりたいことを見つけて周りを巻き込みながら楽しく生きる生き方。さらに未来を作る合言葉として「I(アイデア)V(ビジョン)I(インパクト)」を提言した。

 渡邊優香さんはミス・ユニバース・ジャパン2012北海道代表、ソプラノ歌手、モデル、女優として活躍。障がいを持つ弟の存在と変化する家族関係の中で、自分の気持ちに問いかけ、道を開いてきた物語を語った。小学3年生のときに弟に骨髄移植することを決心。そのときの入院先で小学3年生の勉強をしていた小学2年生の女の子との出会ったことが今の生き方につながった。その子は進学できずに亡くなったという。何気ない日常は与えられた幸せだと知った体験だった。「決断は正しいかどうかではなく、自分が責任を取れるか否かである」と力を込め、画家になった賢治さんの絵を背景にアメイジンググレイスを熱唱した。

 植松電機の植松努さんは「思うは招く」をテーマに講演。会社見学にきたアフリカ人から「どうせ無理という現状から未来を諦めた人間は、奪う人間になる」と聞いた植松さんは「誰もが無理と言う宇宙開発を自分がやって、“どうせ無理”という言葉をなくそう」と決意。その後、北海道大学でカムイ式ロケットの研究を進めていた永田教授と出会い、子どもの時に諦めた宇宙開発に携わることになる。「失敗をマイナスだと思う人はみんなの可能性を奪ってきた」と話し、「失敗しても自分を責める必要はない。失敗は未来を良くするためのデータ。失敗した人に「だったらこうしてみたら?」と声をかけ合えば全員の夢がかなう」と呼び掛けた。

 伊達市噴火湾文化研究所長の大島直行さんは、縄文人の神話的世界観を「月と水」「蛇」「子宮」の3つのキーワードで読み解いた。脳には神話的世界観がプログラミングされており、時空を超えて現代にも不思議な習慣が残っていると持論を展開。月の水を運ぶ役割を担う蛇は神社でまつられ、水を出す器具を「蛇口」と呼ぶなど、日本には蛇信仰が根強く残っている。縄文土器の縄模様は蛇を表し月の水を呼び込む器であるとも説く。「現代は合理的および科学的思考に頼るようになったが、神話的思考とバランスを取ることは人類にとって必要だ」と話した。

 7人のプレゼンテーションの後、同イベントの代表、ネパール出身のディリップ BK シュナールさんは「最初のきっかけは東日本大震災だった。ネパールの子どもたちの支援活動でお世話になった日本に恩返ししたい気持ちから2012年2月にTEDxSapporoを初開催し、札幌から3.11後の日本の現状と価値があるアイデアを世界へ発信した。このときのボランティアは限られた人数だったが、今では114人のボランティアが力を合わせる大きなイベントに成長した。私は来年帰国するが、私から引き継いだチームがこれからこのイベントを動かしていく。引き続き支援をお願いしたい。私はネパールに日本友好センターを作り、国と国をつなげるレベルで頑張っていく」と抱負を述べた。

札幌経済新聞VOTE

コンビニでおにぎりを買ったら…

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース