札幌・ススキノ「社交会館」(札幌市中央区南5西2)の「海鮮原価酒場 和み屋」(TEL 011-215-0838)が、サラリーマンを中心に人気を集めている。
席料の1,260円を支払うと、メニューは全て原価で提供する同店。2011年に「原価BAR」(品川区)がオープンしてから話題となったシステムで、店は最初に利用客から支払われる席料や入店料を利益とするため、提供するメニューに対しての利益を度外視して原価で提供できる。利用客は一般的には高価な食材、高級品も原価で注文できるため、「普段手の届かない」料理や食材を味わうことができるなどのメリットがある。
同店は今年4月18日にオープン。飲食店、千葉でトラック運転手などを勤めていた店主・山屋和博さん(43)が地元・札幌に帰ってきたときに始めた。「戻ってきて『久しぶりのススキノ!』と友人と繰り出したが、どの店も高くて驚いた」と山屋さん。「いい食材、いい料理を提供すると価格は高くなるが、あまりに高いと時代とは合わないしお客さんも店を選ぶのが難しくなる。かと言ってその辺の食材を大量に仕入れて安く提供することは自分の考えと違った。自分だったらどういう店に行きたいかを考えた末、原価提供のスタイルが一番だった」と振り返る。「北海道外ではところどころで流行(はや)っているのに、なぜ札幌で誰もやらないのか不思議だった。札幌市内では自分が調べた限りバー、焼き肉店など2、3店あるが、海鮮をメーンにした原価提供の飲食店はなかった。食べ放題の店やリーズナブルなチェーン店などとは競合しないジャンルが海鮮だった」という。
店舗面積は約20坪で、席数は、掘りごたつ=16席、テーブル=8席、カウンター=5席。「海鮮というと特に高価なイメージも強いが、当店では席料の1,260円が最初にもうけとなるので、原価で提供する限りメニューではもうけを出せない薄利多売の商売。しかしその分、原価でしか食べられない、原価だからこそ注文できるおいしい食材をお客さんに提供できることはお客さんにも喜んでもらえる。モノ・味・質に関してはススキノの飲食店の中でも自信がある」と山屋さん。「原価が分かってしまうので同業からは煙たがられそうだが、原価で提供する限り無理な値下げ交渉する必要がないため魚屋などからは嫌われない(笑)」と笑う。「食材原価を40%とした場合、一般的な相場に比べておよそ3分の1の価格で提供できる」とも。
メニューは、「イクラしょうゆ漬け」(398円)、「極上シマホッケ」(698円、半身=350円)、「姫ダラ焼き」(2本入り180円)、「生本マグロ」(630円)、「平政刺し」(158円)、「タコ刺し」(148円)、「トロ 時不知(ときしらず)」(250円)などの海鮮の日替わりメニューや、1925(大正14)年創業の老舗豆腐屋「畔田(くろだ)商店」(中央区南12西13)から仕入れる手作りの「昔ながらの三角揚げ」(180円)、「よせ豆腐の揚げ出し」(145円)、「よせ豆腐の冷奴」(148円)、オリジナルスイーツ「豆乳で作ったレアチーズケーキ」(210円)、「よせ豆腐のみそ汁」(58円)などが人気だという。「刺し身で使う海鮮メニューは波もあるが、冷凍ものを使わないこだわりがあるため。逆に来るたびにさまざまな海鮮があるので常連さんには評判がいい(笑)」
定番のおつまみメニューは「枝豆」(80円)、「ポテトフライ」「塩から」「北海道産 手羽先2本」(98円)、「梅おむすび」(75円)、「鮭おむすび」(108円)など。
ドリンクは、「アサヒスーパードライ・中ジョッキ」(170円)、「ウーロンハイ」(68円)、「樽ハイサワー」各種(128円)、梅酒(108円)、「ブラックニッカクリア」(88円~)、「竹鶴17年」(348円~)、ソフトドリンク各種(60円~)、「黒霧島」(98円)、「八海山 本醸造」(408円)など。持ち込みもできる。
「バブルを経験した60代ぐらいの大人たちは、昔は接待で高給でいいものを食べてきた経験があるのでおいしいものを求める人も多い。高いお金を払えばいくらでもいいものを食べることはできるが、時代が時代なだけにそうもいかなくなってきた。バブル世代も、バブル世代に憧れた世代も、原価だからこそ注文できる高品質の料理や食材を食べる機会になってほしい」と山屋さん。「僕らススキノの地盤となる飲食店が高価だと次の店にも行きづらい。いいものをリーズナブルに楽しんで、その後にスナックやクラブに行く流れをつくり、昔みたいなにぎわうススキノをもう一度作りたい」と話す。
営業時間は16時~23時。日曜定休。