特集

誰でもマイノリティだしマジョリティ。視点を変えて見えてくるもの

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人それぞれ好みや苦手なものがあるもの。しかし、いずれも「好き」か「嫌い」だけでなく、「あまり」好きではない、「ちょっとだけ」好きなど、好みにはグラデーションがあります。それらはすべて多数派といえるでしょうか?自分自身のマイノリティ、マジョリティに向き合い、好みや指向の多様化について考えてみませんか?

Mmプロジェクトとは?

「Mmプロジェクト」をご存じでしょうか? 「Mm」はマジョリティ(=多数派、多数者)とマイノリティ(=少数派、少数者)を組み合わせた言葉。同プロジェクトは、地域市民・地元企業・LGBTQなどの課題当事者が、LGBTQという課題を通して、さまざまなマイノリティ課題の解決に向けたクリエイティブを共に考え、共に創り、共に発信することで、全員が当事者意識を持って、マジョリティとマイノリティが本質的に共存できる「みんなが生きやすい街」を目指すプロジェクトです。

LGBTQ・SOGI(E)とは?

近年耳にする機会が増えた「LGBTQ」は、L=レズビアン・G=ゲイ・B=バイセクシャル・T=トランスジェンダー・Q=クイアやクエスチョニングの頭文字を組み合わせた言葉です。同性を好きになる人、両性を好きになる人、心と身体の性に不一致を感じる人々の総称としてLGBTQという言葉が用いられています。しかし、あくまでこれらは総称の1つなので、これだけ、というわけではありません。
2016(平成28)年ではLGBTという言葉の認知度は54.4%でしたが、2019年には91.0%まで高まりました。これまでは「知っている」という言葉ですが、これからは「分かっている」「理解している」という言葉になっていくでしょう。

このほか、SOGI(E)という言葉もあります。SOGI(E)はSexual Orientation and Gender Identity (Expression)の頭文字の言葉で、性的指向や性自認のことです。
LGBTQは「誰」を指すのに対し、SOGI(E)は「どんな性別を好きになるのか」、「自分自身をどういう性だと認識しているのか」という「状態を指す」言葉であるため、すべての人が包含されています。SOGI(E)はすべての人の属性であるため、「属性にかかわらず、平等に扱う」という意味で使われ、LGBTQだと該当しない人には「他人事」になってしまいますが、すべての人が対象となるSOGI(E)の考え方は、全員が「自分事」として考えられるようになります。

性はグラデーション

性のあり方は必ずしも線引きがあるものではありません。いくつかの要素で考えてみると、誰しも必ずしも片方に偏っている、ということはないはず。

例えば法律上の性別で考えてみましょう。法律上という制限をつけるとほとんどの人が「男女」どちらかに分けられます。
しかし、性自認で考えてみると、自らのことを男性だと認識している人、女性だと認識している人、どちらでもない中性だと考えている人、そして決めたくない人などさまざまですよね。
また、性的指向においては、自分の恋愛や性愛の感情がどの性別に向くのか、あるいは向かないかで考えられます。異性を好きになる人もいれば、同性を好きになる人もいます。さらに両性を好きになる人、性別で好きになるわけではない、特定の誰かを好きにならない、などさまざま分けられます。
さらに社会的にどのように性別を表現するのか、振る舞うのかといった性表現においては、「俺」「私」といったどのような一人称を使うのか、パンツスタイルが好きなのか・スカートが好きなのかなど、人によって好みはさまざま。
こうして考えてみると、すべての人が同じ答えになるわけではありません。それぞれマイノリティの要素も、マジョリティの要素も持ち合わせていて、グラデーションになっているのです。

LGBTQ当事者が抱える社会課題とは?

満島てる子さん

今回はLGBTQ当事者であり、「さっぽろレインボープライド」副実行委員長である札幌在住の女装家・満島てる子さんにお話を伺いました。

満島てる子さんは三重県出身。大学進学を機に北海道に移住しました。満島さんは、北海道大学で学びたい先生がいたこと、そして進学当時、すでにゲイとしての自認があり、家族や地元の人と離れることで、ゲイとして生きやすくなるのではないか、という一縷の望みがあって北海道に移住したと話します。
以来13年、北海道に住み、現在ではすすきのでセクシャリティフリーの女装サロンバー「7丁目のパウダールーム」で店長を務めています。

そんな満島さんはLGBTQが抱える社会課題について「日本におけるLGBTQの社会課題っていうのは特に2021年、浮き彫りになったかなと思っています。ちょっと極端な言い方をすると、社会課題しか存在しないと思っています」と切り出します。
詳細について満島さんは「オリンピックの開会式だったり、閉会式だったりでレインボーが要所要所で象徴かのようにすごく使われていましたが、そんな国でLGBTQの差別禁止法案すら通っていない。また、同性婚についての民法や憲法、どちらでも構わないのですが、これらも成立していないという、アンバランスな状況があると考えています。LGBT(Q)という言葉は、浸透してきたような感覚はありますが、法律や行政という部分についての取り組みがすごく遅れているところが『課題しかない』という部分の大きな原因になっていると感じています」と話します。
一方で「日本で生きていてすごくありがたいなと思う部分もあります。それは一般の意識と行政の意識の乖離の補修というか、せめぎ合いを一般意識側に寄せていこうと企業さん方が取り組んでいただいています。国がまったく動かない部分であっても、各企業の社内制度という形で、行政行為に相当するような婚姻関係として認める、というものもあり、行政と一般の意識とのすき間を埋めていってくださってる」と話してくれた。

続いてMmプロジェクトに参加した経緯について満島さんは「行政、そして一般意識を埋めるきっかけとして、LGBTQに関する取組内容を評価し、登録を行っている札幌市フレンドリー指標制度があります。しかし、制度になってしまうと、制度を作った、登録したというだけで、活動が一瞬止まってしまうようなこともあるんじゃないかなと思っていて。なので制度で終わらせずに、これからも続けていければいいんじゃないかなと思っていて。例えばいろいろな企業様とコラボさせていただくであるとか、さまざまな形でさまざま人と情報共有させていただくということが、今一番社会課題に対してできることなんじゃないかなと思い、今回Mmプロジェクトに参加させていただいています」と話します。

さっぽろレインボープライド

9月19日にオンラインで開催される「さっぽろレインボープライド2021」。同イベントについて、満島さんはこうPRする。

「さっぽろレインボープライドは毎年9月19日に開催しています。非常に平たく言うと、LGBTの人たちがつながる場所を提供すると同時に、LGBTについて知ってもらう場所を提供し、そこからさまざま変化が起きれば良いな、と思いながら開催させていただいているイベントです。LGBT当事者が当事者であったり当事者を応援してくれるあらゆる人であったり、そういう人たちに実際に会ってつながることができる、本当に貴重な場面の1つなのではないかなと実行委員としては思っています。こういった場所がなくなることは、LGBT当事者の人生にすごく大きな影響を与えかねない、もっと言うと例えばメンタル的な部分で命を1つ無駄にすることになってしまうことにも繋がりかねないと思っているので、パレードの火を絶やさないということ、パレードを続けていくっていうことが一番大事なところかな、思いながらこの2年間活動をしてきました。何よりパレードという場所に来ていただいて、そこが何を目的にしている場所なのか知ってもらうことが一番大事なことなのかなと思うので、自分たちが目指したことを少しでも伝えられるような、そういう機会になればと思っているので、気軽に参加して欲しい」と呼び掛けます。

Rethinkしよう

Rethink PROJECTは、JTがパートナーシップを基盤に取り組む、地域社会への貢献活動の総称。当たり前をもっと深く考え、「Rethink(=視点を変えて考える)」することで、これまでにない視点や考え方を活かし、新しい明日を共に創り上げるために社会課題と向き合うプロジェクトです。

全国で展開している同プロジェクトですが、Mmプロジェクトは、北海道ではじまった新たな試み。さっぽろレインボープライドと札幌市、JT北海道支社のメンバーでいろいろ組み替えていき、出来上がった。

JT北海道支社の中城さんは「私たちはさっぽろレインボープライドさんと数年前から一緒に取り組みをさせていただいて様々なことにチャレンジしてきました。しかし、世の中が多様性を認め合えるようになるには一企業でできることに限界があると感じていました。そういった多様性を認め合える活動を永続的に推進するにはやはり、理解の輪を広げ、関係人口を拡大することが不可欠だと我々も思っています。今回は札幌市様や札幌市LGBTフレンドリー企業の皆さま、さっぽろレインボープライド様、我々、そしてそのほかの皆さんに参加いただきましたが、もっともっと輪が広がるように少しでも興味のある方はお声がけいただきたいと思っています」と話す。
また、中城さんは「このような活動を通じ、当事者の方々が抱える悩みや課題を多くの方が知ることができた、というだけでも大きな一歩と思ったのが率直なところ。それは我々もそうですし、参加いただいた人にも日常の小さな変化とか、新しく1つの物事を新たな視点から考えるきっかけ作りにはなったと思います。今回は初の試みでしたが、今後も継続して推進していきたい」と話してくれました。

性別を考える場合の区分は、男と女の2つが一般的。しかし、中性的という言葉がある通り、実は2つの間には明確な線引きはありません。体は女性でも、心は中性的だったり、恋愛はどちらかというと男性が好きだったり、しかし男女どちらとも取れる服装が多かったり、と人の「性」はグラデーションを描いています。視点を変えて考えてみると、誰しもマジョリティだと言えますし、マイノリティともいえるでしょう。それらは実は小さな差だったりします。自らの、そして相手の「性」について、視点を変えて「Rethink」してみませんか?

※取材時は「さっぽろレインボープライド2021」開催前

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