札幌駅前近くにあるJA北濃ビル(札幌市中央区北4西1)に「街なか田んぼ」が設けられ、ビルの前を行き交う人の関心を集めている。
田んぼを作ったのはJA北海道中央会。北海道の農業の魅力発信拠点として、気軽に「農」に触れることができる場所を作ることを目的に開園したという。
昨年から始めたこの取り組みは今年で2年目。今年は5月28日、JAグループの役員と新入職員、食育の一環で札幌市内の保育園児11人とともに、道産米の「ゆめぴりか」「ななつぼし」「ふっくりんこ」の3品種・136株を田植えした。併せて、ビル横の1.8メートル×10メートルの花壇スペースを「あぐり農園」と名付け、畑作物の栽培展示も実施。春まき小麦、ジャガイモ、てん菜、大豆、トウモロコシ、タマネギ、ニンジンの栽培を始めた。
7月28日には園児の観察会を兼ねて5体のかかしを作ったが、約10日後に苗数本が抜かれるイタズラが発生。「全部抜かれたのではないので、かかしが守ってくれたと思う」と、担当で同企画の発案者でもある鈴木茂明さんは振り返る。稲を収穫した9月28日、園児たちにその経緯も含め報告したという。
農園で育てたトウモロコシはカラスに狙われたため収穫を諦め、玉ネギはピンポン玉大にしか育たないなど予想外の出来事もあったが、ジャガイモ、てん菜、小麦、大豆は順調に生育している。
収穫した稲は現在、はさがけをして乾燥している最中で、今月末に玄米にする予定だという。11月には、育てたジャガイモや玉ネギとともに、カレーライスにして園児たちと一緒に食べる予定だ。
鈴木さんは「稲を育てている間、観光客やサラリーマンが立ち止まって田んぼを見ていたり、稲の収穫時期の問い合わせの電話があったり、昔農業をしていた人から話しかけられたりすることもあった。てん菜を見て『ホウレンソウですか?』と聞かれたことも。かかしと一緒に写真を撮って個人ブログで紹介している人もいた。ビルの谷間に行き交う人たちに癒やしや安らぎを与えられたのでは」と手応えを感じている。
この取り組みは来年も行う予定。「来年は月明かりの中、田んぼの前でバイオリンコンサートも開いてみたい」と笑顔を見せる。