札幌市内各地にまつわる物語を映像化するプロジェクト「Sapporo Movie Sketch(サッポロムービースケッチ)」の最新映像作品が3月、完成した。企画はコンテンツ系クリエーターのキュレーション施設「インタークロス・クリエーティブ・センター」(白石区東札幌5条1)。
映像業界の発展、産業創造、地域活性などを目的に2003年に始まった同プロジェクト。「場所にはストーリーがある」をテーマに、各地にまつわる実話に基づいた短編映画を作る。これまで「札幌市時計台」や狸小路の老舗「中川ライター店」などを舞台に20の場所と物語を映像化した。
今回新たに完成した作品は、狸小路商店街の物語「狸詣(まい)り」(常松英史監督)、クラーク博士と彼が住んでいた創成川沿い居住跡を舞台にした物語「Boys, be delicious.」(高橋研太監督)、かつて国道36号線沿い・豊平橋に実在した渡船場の渡し守の物語「古里ツムギの幻憬綺譚(げんけいきたん)」(芳井勇気監督)の3作。
作品は3月末、動画サイト「ユーチューブ」で公開する予定。英語字幕付きのバイリンガルで公開し、海外に向けても発信する。「この取り組みは札幌に住む人、道内外の観光客など全方位に向けて伝えられることが強み」と話すプロジェクト担当の久保俊哉さん。「知られざる場所、ストーリーが掘り起こされることで街の見え方が変わり、興味が湧く場所が増える。この取り組みを続けていくことで歴史もアーカイブされる」
著作権を監督に持たせることで、国内外の映画祭や「札幌国際短編映画祭」に自由に出品できるのも特徴。「このプロジェクトはきっかけづくり。ここで作った作品を武器に多方面で活躍してほしい」と人材育成も視野に入れる。
4月には同プロジェクトのスマートフォン向けアプリをリリース予定。市民からのエピソード募集や各地をマッピングする機能を持たせる。映像を作る基となるストーリー探しの段階から市民が参加できるようにすることで「まちと市民が一体となって進めるプロジェクト」を目指すという。
芳井監督は「本州に比べると歴史が浅いといわれるが、調べて見ると本当に多くのエピソードが眠っていた。映画の持つ力を通して郷土を愛するきっかけ、住む人と地域を結ぶツールになってほしい」と期待を込める。