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インタビュー2016-05-30

海を渡ったイタリア人チーズマスター 北海道3年目の挑戦。

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札幌市白石区にあるチーズ工場、株式会社ファットリアビオ北海道のチーズマスター『ジョバンニ・グラツィアーノ』のことを語る時に、絶対に外せない言葉がある。

それは「職人」という言葉。南イタリアのカラブリアで、チーズ職人だった父親のチーズ作りを5歳の頃から手伝っていたジョバンニは、若い頃に父親のチーズ作りの秘伝を教わり、その後シーラにあるアグリツーリズモ農場Fattoria Bioのチーズ工房チームの中心的人物として15年を経て、2013年に来日し、「北海道の牛乳でイタリアのフレッシュチーズを作る」というプロジェクト【ファットリアビオ北海道】のチーズマスターに就任した。

イタリアから海を渡った職人

ジョバンニの幼少期

ジョバンニの幼少期、5歳になる頃からチーズに触れていた。

ジョバンニが生まれ育った南イタリア、カラブリア州の風景

ジョバンニが生まれ育った南イタリア、カラブリア州の風景

Fattoria Bio Italia 15年間勤めた南イタリアの有機農場

Fattoria Bio Italia 15年間勤めた南イタリアの有機農場

南イタリアの珍しいチーズ イタリアでのチーズの歴史は4000年に登る

南イタリアの珍しいチーズ イタリアでのチーズの歴史は4000年に登る

イタリアのチーズマスター マリオ・グリッロ氏

イタリアのチーズマスター マリオ・グリッロ氏

北海道と職人

私が「職人」という言葉にこだわっているのには理由がある。それは北海道に足りないものはお金でもなく人口でもなく「職人」であるという持論があるからである。

北海道は産物に恵まれ、収穫される作物の美味しさは世界でもトップクラスであり、実際に海外でも人気がある。しかし、それらはあくまでもトマトや小 麦など1次的な作物のお話であって、加工に関しては北海道は比較的遅れていると言われることが多い。確かに、どんなに美味しい素材があっても、それを調理 加工する人(職人であるかどうかは別として)のレベルが非常に大切で、間違えば素材を台無しにしてしまうこともあるわけで、例えば優秀なシェフや、寿司職 人などの調理人や、チーズ、ワイン、日本らしいところでは豆腐や日本酒などを作る人たちの思いや、加工技術、経験値などによりその食品の品質は大きく変化 する。最終的にそれを食べた人の「感動してもらう」という共通の目標到達点があるのだが、それに到達することは生半可なことではない。そのような意味で、 ジョバンニは本物の「職人」である。彼の作るチーズには、日本中の食について関心の高いひとたちに大きな感動をもたらしている。

彼にこう聞いたことがある。「ジョバンニはどうしてチーズ職人になろうと思ったのですか?」と。その問いに彼はこう答えた。「なろうと思ったことは ない、気がついたらそうだったんだ」。私はなるほど、と思ってこう続けた。「ではこれからもずっと、チーズ職人を続けていこうと思っているのですか?」 ジョバンニは少し不思議そうな表情で「私にとってこれからもチーズを作っていくことは当たり前のことだよ」。この返答を聞いて、私は少し恥ずかしくなっ た。「チーズ職人」に対して、とても失礼な質問をしているのではないかと自分を疑った。「職人」という言葉に興味を持った私は、職人とは何かを考えてみ た。例えば有名な寿司屋のカウンターで、美味しいお寿司を食べられるのは、その職人が修行してきたからである。その職人技が生み出す、素材の良さを最大限 に引き出した料理にはそれなりの価値があるのだということです。機械が作った豆腐なら100円でも高いと思うが、職人が切り出してくれた作りたての豆腐に なら1000円だって惜しくはない。そう考えると、イタリアのチーズ職人が北海道に来てフレッシュチーズを作るということの意味と価値を再定義する必要が あると感じた。

彼はまるで恋人のようにチーズと向き合っている。彼にとってチーズは大切な彼女のようなもので、1年も熟成したチーズに注文が入って包丁を入れる時 に、いつも彼は少し寂しそうな顔をする。1年間毎日ひっくり返して、表面を拭き上げ、チーズの熟成状態を確認するときのジョバンニはいつも機嫌が良く、鼻 歌を歌っている。出来のいいチーズには名前をつけて可愛がっている。ジョバンニという職人が作るチーズは、ただのチーズではないのです。その価値のわかる 人にこそ買ってもらいたいとジョバンニは言います。

食について考えるとき「何を食べるか」という選択の連続が、身体の健康に最も大きく影響をしている。しかし「食」にあまり関心のなかった若い頃は親や先生 に「好き嫌いをしない!」と何度言われても、それを食べることが自分の健康に有益かどうかよりも、美味しいかどうか、好きか嫌いかだけで選択してきたと思 う。そして我々の時代は食品添加物の黄金時代だったので、お菓子はとても安価で美味しくて、ご飯を食べるよりもお菓子を食べる方が嬉しかった。
大人になって「食」に関心が出てくると、やはり健康なものこそが美味しいのだということがわかった。「職人」が提供するものに安易な保存料や添加物は必要 がない。一流であればあるだけその傾向は強くなっていく。自然にあるがままの素材や宇宙の力を最大限に利用し、旨味を増幅させ、食感をよくするために、職 人は技を磨く。道を作り、さらに求道する。ゴールはなく、作り続けることに理由などいらない。そうした理由から、私は「職人」を尊敬するようになった。

ジョバンニ・グラツィアーノMessage from Giovanni Graziano

Sono passati due anni da quando sono venuto a Sapporo per realizzare uno dei miei sogni: fare il formaggio con il latte di Hokkaido, uno dei piú buoni che abbia mai assaggiato! Ieri, oggi e domani arigatougozaimasu. Se sono riuscito a produrre una varietà di prodotti di alta qualità è anche grazie alla vostra collaborazione e professionalità. Se devo essere sincero, non pensavo che sarei riuscito ad ambientarmi così bene in Giappone, un paese fantastico. Continuerò a inseguire il mio sogno con voi. Come sempre grazie e yoroshiku.

最高においしい北海道の牛乳を使ってチーズを作るという夢を叶えるために、カラブリアから札幌に移住してはや2年が経ちます。いままでも、今日も、 これからも、いつもありがとうございます。こんなに色々な美味しいチーズを作れたのはみなさんのおかげです。本当のところ、遠い日本という国で生きていけ るか、いつも不安でしたが、やはり日本という国は素晴らしいです。これからも日本でみなさんと一緒に夢を実現させます。いつもありがとう、そしてこれから もよろしく。

カードと言われる状態、フレッシュチーズのもとになる。

熟成庫にはまだ販売されていない商品も。

移住2年目にして、ジョバンニのチーズは国内の最高金賞、世界チーズコンクールの銀賞に輝く活躍を見せている。

来日したてのチーズマスターの貴重な一枚。

Giovanni Graziano
(ジョバンニ・グラツィアーノ)
1978年生まれ。南イタリアカラブリア州出身。

学校に通う小さな頃から家族に代々伝わるチーズ作りの秘伝を父親から教わる。20歳でカラブリアのシラ山脈の美しい農場Fattoria Bioで働き始めると、農場オーナーのマリオ・グリッロとサベリオ・グリッロの二人はすぐに彼の才能に気づき、チーズ製造の中心的なメンバーの一人に彼を 置いた。また、イタリアの様々な研修やセミナーに参加し、乳製品製造についての知識を広げ、36歳の時「最高のイタリアンチーズとその製法を、イタリアの 文化とともに日本に伝え広めていく」というプロジェクトに賛同し、2014年に北海道に移住、ファットリアビオ北海道のチーズマスターに就任し、現在に至る。

AWARDS
Mondial du Fromage 世界最優秀フロマージュコンクール SILVER CACIOCAVALLO
Mondial du Fromage 世界最優秀フロマージュコンクール BRONZE QUARTIROLO
ALL JAPAN CHEESE AWARD 2014 GOLD CACIOCAVALLO & RICOTTA
ALL JAPAN CHEESE AWARD 2014 GOLD RICOTTA
AWARDS 2014-2015

Q1:工房スタートの経緯は?

ファットリアビオ北海道の「北海道で本場のイタリアンチーズをつくる」というプロジェクトに賛同したこと。しかし最も大切なことは、北海道のミルクの品質の高さに、私自身が気がついたことです。北海道で初めて作ったリコッタの美味しさは、今でも忘れられません。

Q2:チーズ製造者を目指した、もしくはチーズ造りに目覚めたきっかけは?

父親がチーズ職人で、私は5歳のころから手伝っていたので、物心ついたときにはチーズを作っていました。そしてこれからの人生もずっと、チーズを作るということは、私にとっては当たり前のことです。

Q3:これから目指していること(チーズ、工房の未来の姿など)は?

今後、北海道のミルクでチャレンジしたいチーズは
「ゴルゴンゾーラ」、「ストラッキーノ」、「パルミジャーノ」、「タレッジョ」などイタリアのチーズは全て試してみたいです。1年北海道に住んで思ったこ とは、イタリアの友人たちに北海道を見せてあげたくなりました。私の故郷の南イタリアは、経済的にもとても大変な問題の中にあります。北海道には、南イタ リアと同じ環境と問題があるような気がします。しかしイタリアと日本で、食文化、特に職人の技術というものを日本に輸入して、日本の非常に美味しい産物を 発見しイタリア文化とミックスしていきたいと思っています。

Q4:みなさんへのメッセージ

私のつくるチーズが、日本の皆様に受け入れて頂けるのかどうか最初は不安でしたが、2014年のジャパンチーズアワードで金賞を受賞できたことで自信につながりました。
本当にありがとうございます。

Q5:チーズ造りにおいて、大切だと思うこと

情熱です。イタリアで、おじいさんにいつも教えられていたことは、
「情熱がなければ、何もできやしない」ということでした。

Q6:5年後はどのようになっていると思いますか?

北海道のミルクには、世界最高水準の乳製品を製造できる土壌があります。いい素材があるところには、必ず食文化が根づいていきます。
日本の職人の技術がイタリアの職人たちのレベルに近づくのに、さほど時間はかからないでしょう。しかしそれが5年後かどうかはわかりません。
少しでも早くそれを実現できるよう、私も若い人たちに父親から教わった技術と、私がイタリアで学んだ知識を伝えていきたいと思います。

編集後記

日本のチーズの歴史は未だ150年に満たない。
それに対して、イタリアのそれは、なんと4000年にもなる。

私はこのプロジェクトに携わるようになるまで、北海道のチーズに関して大きな勘違いをしていた。
北海道は酪農王国であり、北海道のチーズは世界に通じる品質にまでなっているのだと認識していた。

しかし東京の尊敬するイタリア人シェフに「日本のチーズは、イタリアのチーズとはぜんぜん違う」と言われて、驚いたものだった。
いったい何が違うのだというのか。

実は日本国内でチーズが作られるようになったのは、本当にここ最近の話で、雪印が海外から輸入したチーズを原材料に成分調整したプロセスチーズの製 造の歴史ですら100年にも満たないのだ。ましてや牛乳からチーズを製造するナチュラルチーズ製造に関しては、まだ10年ほどの歴史しかないのである。
若きチーズ職人候補の酪農家たちが日本のナチュラルチーズの製造を担っているのだ。

チーズの年間消費量に至ってはイタリア人の一人当たり20.7kgに対して、日本人は2.3kgと約10分の1にしか満たない。
このままでは日本のチーズ職人たちに未来はない。

もう一つ気がついたことがある。日本の豆腐文化に、イタリアのチーズ文化は似ているということだ。
チーズなどの乳製品は、日本の豆腐文化よりも古くから大陸の人々のタンパク源として利用されてきた。
チーズ後進国の日本に、イタリアのチーズマスターが移住してきてチーズ製造に携わるということは、まるで日本の豆腐職人が良質な原材料を求めてヨーロッパに渡り、豆腐工場を作ってヨーロッパに本物の豆腐の文化を浸透させようということに等しい。
ジョバンニグラツィアーノの挑戦は、これまでの日本の歴史上初めてのことであり、もしかすると日本の食文化に大きなインパクトを与えることになるかもしれない。
日本人は、これでやっと本場の腕の確かな職人(チーズマスター)によって作られる、新鮮なフレッシュチーズをいつでも食べることができるようになるのである。
今日も搾りたての牛乳が、ジョバンニの手によって魔法のように様々なチーズになっていく。
その姿はまるで錬金術士のようで、ジョバンニの工房はとても神聖な場所に感じる。

FATTORIA BIO HOKKAIDO
http://fattoriabio.jp

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