札幌駅前通地下街歩行空間「チ・カ・ホ」で現在、芸術家の山川冬樹さんがカヌー「カムイチェプ号」の作品パフォーマンスを公開している。
同パフォーマンスは、札幌国際芸術祭の特別展示「セシング・ストリームズ」参加作品の一環として、「River Run Practice(リバー・ラン・プラクティス)~石狩湾から札幌駅前地下歩行空間へ遡上(そじょう)する」と題し行っているもの。
「セシング・ストーリームズ」は、自然や都市におけるさまざまな情報の流れ(ストリームズ)をアーティストが感知(セシング)し、構成する作品を通じて可視化・可聴化していくプログラム。1日7万人以上が利用する同地下街に、映像や音楽などの表現作品を展示し、完成品だけでなく制作工程も見ることができる。
山川さんはロンドン生まれ横浜市在住。音楽や舞台芸術の分野で活動し、これまでにヴェネチア・ビエンナーレ、フジロックフェスティバルなど15カ国で公演を行っている。昨年は渋谷の地下水脈についての新作サウンド・インスタレーションを発表した。
「カムイチェプ号」は、札幌市民が提供した古着を貼り合わせて造る舟で、イヌイットのスキンカヤックがヒントという。「動物の皮で造られているスキンカヤックに対し、カムイチェプ号は人の皮をイメージした古着で構成している」と山川さん。舟には鮭が生まれた場所に帰ってくる母川回帰(ぼせんかいき)の意味も込める。
「カムイチェプ」は、アイヌ語で鮭の意味。完成した舟は7月28日、石狩湾から石狩川、茨戸川、伏籠川、創成川をさかのぼり、札幌の東西南北の起点0条に上陸。カヌーを引いてチ・カ・ホ北3条広場まで戻ってくる予定。所要時間は約13時間。7月18日から24日まで古着を縫う公開制作を行い、25日には場所を移して舟に防水加工を施す。
「チ・カ・ホ」の近くには、かつてアイヌの人々が集った水が湧き出る場所「メム」があったが、明治以降の都市開発で地下水脈が消失してしまったという。山川さんは「札幌国際芸術祭のテーマは『都市と自然』だが、作品を展示する場所に自然がないというジレンマがある」と話す。「何を展示できるのかを考えたとき、自分の体を使って札幌の自然にぶつかり、概念としての札幌の都市と自然を理解したい」と考え、カムイチェプ号を制作したという。
28日の遡上の様子はユーストリームでライブ中継する予定。最新情報は山川さんのツイッターで配信する。