野菜をペースト状にしてスープと組み合わせた「ベジポタ」やスープと野菜のうま味を生かしたラーメン店が札幌市内で人気を集めている。
「ベジポタ」は、野菜(ベジタブル)のスープ(ポタージュ)を意味する造語で東京のラーメン店発祥とされる製法。野菜ならではの甘みや「とろみ」などを生かした味わいが特徴。札幌では昨年8月に「しずる」(札幌市中央区南4西5)、12月に「べじそば ななつき」(南7西6)がオープン。現在は日替わりや限定メニューとして「ベジポタ」のラーメン・つけ麺を提供する店も少なくない。「ベジポタ」について「ななつき」店長の佐々木さんは「野菜のうま味が出ることはもちろん、野菜のとろみが濃厚な食感を生み、後味は野菜ならではのあっさりした重さの残らない一杯に仕上がる」と、独特の特徴が出る魅力を語る。
札幌の人気みそラーメン専門店「狼スープ」(南11西1)では2006年以降、北海道産のジャガイモ「キタアカリ」をスープに溶け込ませ、ショウガ、ニンニクなどを使う定番の「札幌みそラーメン」に独自の味わいを作り出す。
野菜とスープの相性について「狼スープ」店主の鷲見さんは「最初にキタアカリを使い始めた理由は2点で、1点目はスープの塩辛さを改善すること。2点目は広東麺のあんかけのようにジャガイモのでんぷん質でスープの熱を保ち、熱々の状態で提供できるのはという発想から。キタアカリは型崩れしやすいのでスープとよくなじむ」という。ショウガは、内臓を温める成分「ショウガオール」を通常のショウガの約3倍含むという高知「黄金ショウガ」を使うことで「体を中から温める元気と健康の一杯に仕上げた」とし、「ベジポタ」とは異なる視点で野菜の特徴を引き出す。
「しずる」「べじそば ななつき」では鶏白湯、「狼スープ」では合わせみそや豚骨によるスープで、それぞれベースは異なるが、「野菜とスープの味のバランスを取ることが難しい」という点が共通している。「野菜の味は崩れやすいので、鶏白湯とのバランスがスープ作りのポイント。素材の味を感じられる一杯に仕上げる」(ななつき・佐々木さん)、「キタアカリは熟成しやすいため、ジャガイモが出すぎないよう、味を一定に調整する作業が大切」(狼スープ・鷲見さん)。
新ジャンルの「ベジポタ」について鷲見さんは「僕自身『ななつき』のラーメンを食べたが本当においしくて、丁寧な仕事ぶりが伝わるようないい気持ちにさせてくれる一杯だった。今はジャンルも多様化しているので、それぞれのこだわりや地元札幌、北海道のラーメンの個性がかみ合っていけば一層洗練されていくはず」と、札幌の新たなラーメン文化の誕生に期待を寄せる。